2018年04月07日

キアシセグロカモメについて


ビッグイヤー愛知2018では、カウント出来る野鳥は日本鳥類目録 第7版に準拠しています。

この鳥類目録第7版に「種名 キアシセグロカモメ ( 学名 Larus cachinnans)」、「亜種 キアシセグロカモメ (学名 Larus cachinnans mongolicus)」が記載されています。

今回はこの目録第7版の「キアシセグロカモメ」について説明します。

カモメ識別図鑑(氏原巨雄、氏原道昭 著)を参照すると、鳥類目録第7版の種名「キアシセグロカモメ (学名 Larus cachinnans)」は、「カスピセグロカモメ」が該当し、亜種「キアシセグロカモメ (学名 Larus cachinnans mongolicus)」は、「モンゴルセグロカモメ」が該当します。

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このカスピセグロカモメ、モンゴルセグロカモメのどちらも鳥類目録第7版では「キアシセグロカモメ」とよばれる範疇に含まれます。ですからカスピセグロカモメ、またはモンゴルセグロカモメを確認出来た場合は「キアシセグロカモメ」としてカウントして下さい。

ちなみにカスピセグロカモメは日本ではまれだそうです。ですからビッグイヤー愛知2018でカスピセグロカモメを「キアシセグロカモメ」としてカウントできるチャンスは非常に少ないと思われます。

脚が黄色だからといって、脚の黄色いセグロカモメやホイグリンカモメ(鳥類目録第7版ではニシセグロカモメ)をキアシセグロカモメと誤認しないようくれぐれも注意しましょう。

一方、モンゴルセグロカモメは「冬は日本全国で少数が見られる」(カモメ識別図鑑)とのことです。ですからここではモンゴルセグロカモメに関して、セグロカモメと比較したときの識別ポイントを記します。

カモメ識別図鑑(氏原巨雄、氏原道昭)以外では以下の図鑑が参考になります。
 
 ■GULLS OF THE WORLD (KLAUS MALLING OLSEN)
 ■GULLS OF EUROPE, ASIA, AND NORTH AMERICA(KLAUS MALLING OLSEN)
 ■BIRDS OF EAST ASIA (MARK BRAZIL) 
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ではこれらの図鑑を参考にモンゴルセグロカモメのセグロカモメとの識別点を挙げます。

初列風切
初列風切のパターンは、GULLS OF THE WORLD、および GULLS OF EUROPE, ASIA, AND NORTH AMERICA によると、セグロカモメとほぼ同じ、と記載されています。個体差間での重複もあり識別の参考にするには難しそうです。

脚の色
BIRDS OF EAST ASIAおよび、GULLS OF EUROPE, ASIA, AND NORTH AMERICAでは肉色に描かれており、GULLS OF THE WORLDの写真ではいずれも肉色です。カモメ識別図鑑では「足は黄色いものもいるが淡いピンクか肉色の個体が多い。」と記載されています。
論文「Phenotypic variation and systematics of Mongolian Gull (Yesou 2001)」によると、バイカル湖とモンゴル国内で捕獲したモンゴルセグロカモメの脚の色についての調査結果では、グレー22〜40%、黄色13〜27%、ピンク21〜46%、肉色4〜10%、それぞれが混じった色6〜30%となっています。比率に幅があるのは捕獲したコロニーごとの差、および年齢差のためです。よって脚の色も識別の参考にはならないと思われます。下記論文が引用先の原著です。モンゴルセグロカモメの写真が多数掲載されているので参考にしてください。

論文 モンゴルセグロカモメの表現型変異と系統分類学 (Yesou 2001)

背の色
「モンゴルセグロカモメの多くはセグロカモメより背の色が淡い。」(GULLS OF EUROPE, ASIA, AND NORTH AMERICA)
また、GULLS OF THE WORLD では、KODAKグレースケールで背中の色を表しています。数が大きいほど濃くなります。それによるとモンゴルセグロカモメはグレースケール5〜6、セグロカモメはグレースケール5.5〜7(8)です。ということは平均的にモンゴルセグロカモメはセグロカモメと比較してやや淡いグレーとなります。
Yesouの論文では マンセルインデックスでグレーの度合いを比較しています。マンセルインデックスでは数が少ないほど濃くなります。モンゴルセグロカモメは4.5〜5.5、セグロカモメは5〜6です。つまりモンゴルセグロカモメはセグロカモメより背の色が濃いということになります。この両者の食い違いはサンプルリングした地域の個体差でしょうか。いずれにせよ背の色もあまり識別の参考にならないと思われます。
参考にYesouの論文からグレーの度合いを表した表を添付します。セグロカモメの亜種のうち日本で見られる亜種はセグロカモメ vegaeです。
(クリックで拡大)
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冬羽の斑点
「頭の班はセグロカモメより範囲は限定的で細く鋭い。冬半ばから夏羽に移行する傾向が強く頭の白さが目立つ」(カモメ識別図鑑)
「冬羽の班は通常薄く、首後部に限られる」(BIRDS OF EAST ASIA)
「冬羽でも頭部は白い。せいぜい首後部に薄い茶色の班が出る程度」(GULLS OF THE WORLD)

これは重要な識別点となりそうです。


「モンゴルセグロカモメは嘴に黒斑のある個体が多い」(カモメ識別図鑑)

これもよい識別点になりそうです。

全体の印象
「翼や嘴、足など全体的に多少長い印象に見える個体が多い」(カモメ識別図鑑)
「ボリュームのある胸、角度のついた前頭部とフラットな額、やや後方にある目、三列風切の段差が明確」(GULLS OF THE WORLD)
「休んでいるとき、初列風切の尾羽からの突き出しが長くスマートな印象」(BIRDS OF EAST ASIA)


識別の説明については以上です。

なかなか決定的な識別の決め手は難しそうですね。
冬羽での頭部の白さでモンゴルセグロカモメかも、とあたりをつけて、あとは写真を撮って全体の印象で判断する、という手順での識別になると思われます。

もうカモメシーズンもほぼ終わりなので今年の秋から12月にかけてはぜひともキアシセグロカモメ(モンゴルセグロカモメ)の識別にチャレンジしていただきよい結果を出してください。

ではビッグイヤー愛知2018の参加者の皆様のご健闘を祈ります。


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2018年04月02日

オーストラリアからのニュースレター

オーストラリアから「NSW Field Ornithologist Club Inc(NSW鳥類学者クラブ)」が発行しているニュースレターの最新号(April-May 2018)が届いたので掲載します。

表紙の絵はルリミツユビカワセミ(Azure kingfisher)です。大変に美しいカワセミですね。
他にもきれいな写真がたくさん載っているのでぜひご覧ください。
(クリックでダウンロード)
無題.jpg

Birding_NSW_April_2018_Smaller.pdf

このニュースレターの中にひとつ気になる記事がありました。

5ページ目の「How Many birds are Killed by Cats?」と題した記事です。
ざっと意訳して紹介します。


<意訳>
「2018年3月17日 オーストラリアン・バード・スタディ・アソシエーション(ABSA)会議でサラ・レギー博士は、オーストラリアの猫による捕食問題の概要と、それが野生動物減少にどんな意味を持つのかについて発表した。

・最初の植民船団によってオーストラリアに持ち込まれた猫は、1890年にはオーストラリア全域で生息するようになった。1879年にウサギが持ち込まれたことで猫の生息数は激増した。

・近代に絶滅した動物相の25%は主に猫が原因である。

・猫の生息数は乾季と雨季で大きく変動する。乾季には140万匹、雨季には560万匹までになる。繁殖パターンは多くの野鳥の種とは異なる。

・猫の数は、野生環境では210万匹、改変された土地では70万匹、飼い猫は390万匹、合計で670万匹。

・数千匹の猫の胃袋サンプル解析により、猫は1年間で129羽の野鳥を捕食することが立証された。よって猫によって捕食される野鳥の数は、猫の生息数の平均から算定して一日あたり100万羽、1年間で3億7700万羽となる。

・90憶から130憶と見積もられるオーストラリアの野鳥の約3.5%が猫によって毎年捕食されているということがこの研究と報告で示された。」 以上。


猫によって捕食される野鳥の数が半端じゃないですね。
オーストラリア政府は対策に乗り出しており、野猫の駆除対策を実施中です。

詳しくはこちらのオーストラリア政府のホームページ参照
http://www.environment.gov.au/biodiversity/invasive-species/feral-animals-australia/feral-cats

日本でも多くの希少種が野猫の犠牲になっていると聞きます。
参考に日本の環境省が作成した野猫パンフレットを添付します。

環境省パンフレット

この野猫問題は今後、もっと多数の方々が関心を持つべき事案と思われます。



日本野鳥の会愛知県支部ホームページ http://www.wbsj-aichi.org/
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2018年03月31日

英語の野鳥図鑑の読み方1回目

今まで支部会員の皆様から、英語の野鳥図鑑が読めたらいいな、という声をたくさん聞きました。
そこで今回から数回に分けて英語の野鳥図鑑を読むコツをお伝えします。(中学生レベル)

参考にする野鳥図鑑は、「COLLINS BIRD GUIDE 2nd EDITION (コリンズ バードガイド 第2版)」。
イラストが非常に精緻で、採餌中の姿勢や群れでいるときの様子まで描かれているすばらしい図鑑です。

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「COLLINS BIRD GUIDE」を読むには3つのコツがあります。

1.省略に慣れる
2.部位と色の表現に慣れる
3.専門用語に慣れる

今回は「1.省略に慣れる」について

<原文>
"DABBLING DUCK
Surface-feeding small to large-sized ducks of lakes, rivers and shallow water, often upending."

(COLLINS BIRD GUIDE 2nd EDITION 24ページから引用)

<意訳>
水面採餌ガモ
湖、河川、浅水域の水面で採餌する小型から大型のカモ類で、しばしば逆立ち採餌を行う。

<単語>
dabbling duck: 水面採餌ガモ(マガモ、コガモ、オナガガモなど淡水ガモ類のこと)
surface-feeding:水面採餌
small to large-sized:小型から大型の
lake:湖
river:川、河川
shallow water:浅瀬、浅水域
often:しばしば、良く、しょっちゅう、
upending:逆立ち(逆立ち採餌と意訳)

<解説>
非常に簡潔な文です。主語と動詞を補い、文の最後の" , often upending." のコンマの代わりにピリオドで区切って動詞 (feed 採餌する)を補うと次の文になります。

Dabbling ducks are surface-feeding small to large-sized ducks of lakes, rivers and shallow water.
水面採餌ガモは湖、河川、浅水域の水面で採餌する小型から大型のカモ類です。

Dabbling ducks often feed by upending.
水面採餌ガモは、しばしば逆立ち採餌を行う。

このように省略されている主語や動詞を補い、文章を短く区切ると分かりやすい文になります。

野鳥図鑑に出てくる文の多くはこのように主語、動詞が省略されています。
主語と動詞を補うことで、ほとんどの文は中学生レベルの単純な現在形の文になります。

Very easy, isn't it? 


日本野鳥の会愛知県支部 http://www.wbsj-aichi.org/
会員募集中です。⇒ http://www.wbsj-aichi.org/recruite.html













posted by Ted at 06:02| Comment(0) | 英語の鳥図鑑