2017年08月24日

サギは吉祥

サギは古来、吉祥であり、神の使いでした。

7月に、埼玉県さいたま市の「サギ山記念館」に行ってきました。
図1.png

ここはかつて国の特別記念物「野田のサギ山」として保護されてきたサギコロニーがあったところです。
埼玉県浦和市(今のさいたま市)にかつて存在した日本最大と思われるサギコロニーです。今から約290年前に野田村の屋敷林にサギが営巣を始めました。その後、約250年の間、このコロニーは続きました。昭和27年には国の特別天然記念物指定に指定され、最盛期は羽数 約2万羽いました。
図2.png

13代将軍徳川家慶が日光参詣の途中、サギ山を見たという記録がありそのときの光景を描写した絵がサギ山記念館に飾ってあります。かなり大きな絵です。
図4.png

野田のサギ山のことをその歴史から観察記録まで詳細に記述した名著「野田の鷺山 (小杉昭光 著)」によると、サギコロニー周辺の人たちはサギが春先にコロニーに到着すると吉祥として大変に喜び、手厚く保護したそうです。
book nodanosagiyama.jpg

このサギを吉祥として保護する慣習はその後も続きました。昭和の時代に入って国の天然記念物に指定されるころには巣から落ちてしまったサギのヒナを育てるための巨大なゲージがコロニーのすぐ横にあり、サギを観察するための高さ15mのやぐらまでありました。
図3.png

昭和37年には常陸宮殿下がサギコロニー見学に訪れるほどの場所だったと記録にあります。しかしこの頃からサギのエサ場となる周辺の田んぼには農薬が大量にまかれるようになりサギのエサが激減、サギの営巣数も年を追うごとに減少していきました。そして、昭和47年には野田のサギ山として約250年もの間続いたサギコロニーは消滅してしまったのです。

250年も続いた野田のサギ山が消滅してしまったことは残念です。しかし、ここでぜひ記憶にとどめておきたいことは、コロニー近隣の村人はサギは吉祥として手厚く保護した、ということです。毎年春になるとどこからともなくやってきて巣をかける白くて美しいサギは村人から見ると幸せを運んでくる神の使いにでも見えたのでしょうか。たしかに夏の緑の田んぼの稲穂の間から見える純白のサギたちを見ると夏の暑い空気を吹き飛ばしてくれるかのようにすがすがしい気分になります。特に夕暮れどき、真っ赤に燃える夕日を背にして塒へ帰ってくるサギの姿には神々しささえ感じます。古えの人々がサギの姿と神を重ね合わせたのも無理もないことと思います。

下の写真はその神々しさを伝える奇跡的ともいえる1ショットです。サギの背中にまるで神様が乗っているかのようです。
Y46A7797.JPG
(写真 村上修 日本野鳥の会愛知県支部)

サギは吉祥という話に関する民話の情報をサギカウント調査員のMさんからいただきました。
岐阜県下呂市の下呂温泉にその民話があります。
「昔、ある日突然温泉が出なくなって村人たちは神様にいのったところ、足を怪我した1羽のサギが河原に降りてその場を離れません。不思議に思った村人がサギに近づくとサギは飛び立って松の大木で休んだあと飛んで行った。サギが去ったあとを見ると温泉が湧いていた。サギが止った松の木の下には薬師如来像があった。村人はあのサギが薬師如来像の化身であったことを知った。」
P_20170813_101317.jpg

なんとこの民話では、サギは薬師如来の化身とされています。
いかにサギが民衆の間で吉祥と見なされていたかがうかがえます。

愛知県豊明市には、雨ごいをする村人たちの前にサギに乗った仙人が現れたという民話があります。
0001.jpg

こんな民話になるということはそれだけ昔からサギは人の身近にいてその存在に吉祥を感じたのでしょう。

能の「鷺」では、シテはサギの冠を付けて白装束の衣装で演じます。
あらすじは以下の通りです。
「天皇が池のほとりの庭園で詞を読んでいると一羽の鷺が舞い降りる。天皇は鷺を捕えるように蔵人に命じる。蔵人は鷺を捕えようとするが逃げてしまう。そこでこれは天皇の命令である、と蔵人が鷺に告げると鷺は戻ってくる。天皇は喜び鷺に五位の位を授ける。鷺は喜び、舞う。」
noh.jpg
(写真は日本野鳥の会「野鳥」誌 2012年9、10月号48ページから引用させていただきました。)

ここではサギはなんと天皇から五位の位を授かっています。
サギはその美しさからそれだけ高貴な存在として見られていたのでしょう。

夏の青空のもと、緑の稲穂が揺れる田んぼにたたずむ真っ白なサギを見て美しいと思わない人はいないでしょう。
古来から吉祥として、神の使いや薬師如来の化身として親しまれてきたサギの存在を今、改めて見直してもいいと思います。

日本野鳥の会愛知県支部 http://www.wbsj-aichi.org/
サギコロニー調査 http://herons-egrets.sakura.ne.jp/













posted by Ted at 00:32| Comment(0) | サギコロニー調査

2017年08月16日

かにえエコきっず調査隊

8月8日(火)、愛知県海部郡蟹江町が主催する「かにえエコキッズ調査隊」が開催され、日本野鳥の会愛知県支部から佐久間、金澤、野澤の3名が講師を務めました。

エコきっず調査隊は、海部地域の各教育委員会が主催する「川」をテーマに活動する小学生のための環境学習グループです。各地域の川の水質を調べたり生き物を調べたりして川の環境と人とのつながりを学習します。蟹江町や津島市、弥富市など各地域でそれぞれが調査隊を結成して調査をした後、合同で調査結果の発表会を行っています。
0001.jpg0002.jpg

今回の蟹江町のエコキッズ調査隊では蟹江インターチェンジのサギコロニーをテーマにして、サギの生息する環境を学んでもらおう、というのが趣旨です。

予定では参加の小学生15人とともに大型バスに乗って蟹江インターチェンジのサギコロニーを観察したあと、蟹江インターチェンジすぐそばのビルの屋上からサギコロニーを観察することになっていました。ところが前日に台風が来て当日の朝まで影響が予想されたため、サギコロニーの観察は中止しました。その代わり公民館のホールでサギコロニーについての話やサギの動画を見て学んでもらいました。

まず佐久間が、冊子「高速道路がサギのすみかになったわけ」に基づき、サギがなぜ高速道路インターチェンジにコロニーを作るようになったのか、またその周辺の環境はどうなのかなど、丁寧に解説しました。特に村人たちが雨ごいをしたら白いサギに乗った仙人が現れて村に雨を降らせた、という伝説の話では皆、目を輝かせて聞いていました。
0001.jpg


次に野澤が動画でサギがエサを取る様子を解説しました。コサギが足をプルプルと振るわせてエサを取る様子やチュウサギがドジョウを食べる様子を見てもらいました。ゴイサギが昼間に活発に動いてえさを取る様子はあまり見ることのできない映像だったと思います。


そして最後に金澤が、蟹江インターチェンジ内のサギコロニーの様子を撮った動画を見せて、チュウサギの求愛や、ダイサギがエサをヒナに与える様子などを解説しました。非常に美しくかつ迫力のある映像で子供たちは夢中で見入っていたのが印象的でした。

以上で午前の部は終わって、午後からは子供たちが5人づつ3つの班に分かれて発表資料を作成しました。
蟹江町からその発表資料を送ってもらったので以下に公開します。
「サギと人とがともに生きる豊かな自然を守り育てます」とか、
「みんなで協力しあってサギがすめる環境を守り続けます」とか、
「昔からサギは良い鳥として昔話に登場している。サギは仙人や神様の使いとして昔話に登場している」など、思わずこちらの目頭が熱くなりそうなコメントが書いてあります。

3回サギ1班-1.jpg 3回サギ2班-1.jpg 3回サギ3班-1.jpg

子供たちはサギとコロニーのことを本当に良く理解してくれたようでうれしい限りです。










posted by Ted at 15:06| Comment(0) | お知らせ

2017年08月11日

メガソーラーの環境破壊

前回「ソーラーパネルとサギ」の記事を書きましたが、
今回もソーラーパネルからみの話です。

絶滅危惧種のチュウヒが生息している木曽岬干拓地で木曽岬メガソーラーが発電を始めたのは2014年12月でした。
日本野鳥の会三重が中心となって反対運動を展開しましたが奮闘及ばず、ソーラーパネルが設置されてしまったのです。
kisozaki.jpg

木曽岬メガソーラーのホームページによると、
 ・面積  78ha(ナゴヤドーム約20個分)
 ・出力  49155kW
 ・想定年間発電量  5200万kWh/年
  となっています。
http://www.kisozaki-megasolar.com/

  ナゴヤドーム約20個分とはかなりの面積です。

一方、名古屋市の港区潮見町に中部電力の「新名古屋火力発電所」があります。
中部電力のホームページによると総出力 3,058,000kWとなっています。
これは日本の火力発電所としては普通の規模です。
shinnagoya_N8.JPG

もしこの新名古屋火力発電所と同じ電力を木曽岬メガソーラーで発電すると仮定したとき、
木曽岬メガソーラーが何個いるのかを計算してみました。

すると、なんと木曽岬メガソーラーが359個必要という計算結果になりました。
(計算根拠は一番下にあります。)

359個分は面積にすると28000ヘクタールで、これは名古屋市の面積の約85%に相当します。

普通の規模の火力発電所1個分を発電するのに、名古屋市の面積の約85%が必要とは、
いかにソーラー発電とは場所をとる発電方法かが分かりますね。

今、日本の各地でソーラーパネルの設置による環境破壊が報告されています。
愛知県でも海上の森の隣接地に無許可でメガソーラーを設置したフジ建設の問題がありました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/302961/122700037/?ST=msb


三重県四日市では2ヶ所でメガソーラーの設置が予定されています。
その場所はサシバの生息が確認されている貴重な里山環境であるため、
日本野鳥の会三重が反対運動をしています。しかしひとつは着工寸前という状態です。
https://miebird.org/index.php/ja/16-announce/417-shomei201703b


本来、固定価格買取制度というものは地球温暖化防止の観点から再生可能エネルギーによる発電を増やすために採用された制度だったはずです。
しかし誤解を恐れずに言えば、現実は売電によるお金儲けの手段として利用されているだけのように思えます。
里山環境を破壊したり、絶滅危惧種が生息する環境を破壊してまでソーラーパネルを設置するような事業者が地球温暖化防止のことを考えてやっているとは到底思えません。

メガソーラーによる環境破壊になんとか歯止めをかける必要があります。

自治体は大小全てのソーラーパネル設置に際して自然環境保護を第一とする厳しいガイドラインを設けて、環境破壊、景観悪化、希少種生息地破壊につながるような事案は全て排除するようにしていただきたいと思います。

前述の三重県四日市市議会ではそのような動きがあるようです。非常に好ましいことだと思います。
https://mainichi.jp/articles/20170630/ddl/k24/010/183000c

ぜひ全国の自治体に広がればいいですね。




<参考>
計算根拠は以下の通りです。
 新名古屋火力発電所の推定年間発電量 305万kwx365日x24時間x稼働率0.7=1870260万kwh/年
 1870260万÷5200万=359個
 78ha x 359個=28002ha
 名古屋市の面積は、32640ha
 28002ha÷32640ha=約85%

ちなみに、浜岡原子力発電所3号4号5号(合計出力362万kw 稼働率0.7)で同じ計算をすると、
33228haとなり、これは名古屋市の面積を上回ります。



日本野鳥の会愛知県支部 http://www.wbsj-aichi.org/
サギコロニー調査 http://herons-egrets.sakura.ne.jp/
ポートアイランドを野鳥の保護区にする活動 http://www.wbsj-aichi.org/port_island/page.html





posted by Ted at 18:48| Comment(0) | その他