2018年01月14日

ニシセグロカモメ(ホイグリンカモメ)について

藤前干潟周辺でウミネコより明らかに大きく、足の黄色いセグロカモメのような鳥を見かけることがあります。
「カモメ識別ハンドブック (氏原巨雄 氏原道昭)」を参考にすると、”ホイグリンカモメ”とするのが妥当かと思うことがよくありました。

しかし、鳥類目録第7版では、「ホイグリンカモメ」という種名を採用していません。
ビッグイヤー愛知2018ではカウント可能な野鳥の種類を鳥類目録第7版に準拠しています。
なので、もし今回のビッグイヤー愛知2018で、足の黄色いセグロカモメのような鳥がいた場合、判断に迷うと思います。

そこで判断の参考になるよう、日本で入手可能な図鑑を引用しながら説明します。

まず、「フィールドガイド日本の野鳥(日本野鳥の会)」は、鳥類目録第7版に準拠しています。よってホイグリンカモメ独立種としては記載がないですが、カッコ付きでニシセグロカモメと同等に扱われています。
318ページから引用。
ニシセグロカモメ Larus fuscus
「亜種ニシセグロカモメ(ホイグリンカモメ)L.f.heugliniが全国的に渡来するが、少ない。セグロカモメよりやや細身で、成鳥冬羽では足が橙色から黄色味をおびた肉色。背は灰色でウミネコほどの濃さ。翼先端部の黒色部と灰色部の間の白色部は目立たない。第1回冬羽では初列風切は一様に暗色で雨覆はセグロカモメより暗色部が多い。」

「GULLS OF EUROPE, ASIA AND NORTH AMERICA (KLAUS MALLING OLSEN)」では、ホイグリンカモメ Larus heugliniとニシセグロカモメ Larus fuscusは別種として扱われています。バルト海周辺で繁殖する個体群をニシセグロカモメLarus fuscus、ロシアの極北地帯で繁殖する個体群をホイグリンカモメLarus heugliniとしています。

「COLLLINS BIRD GUIDE 第2版」では、ホイグリンカモメ Larus fuscus heiglini はニシセグロカモメLarus fuscusの亜種として扱われていますが、”(種としての扱いは)さらに調査中である。”との記載があります。

「BIRDS OF EAST ASIA」では、ホイグリンカモメ Larus heuglini として、独立種として扱われています。
「カモメ識別ハンドブック (氏原巨雄 氏原道昭)」では前述のとおり独立種としています。

いずれにせよ、今回のビッグイヤー愛知2018では、鳥類目録第7版に従う、というルールにしていますので、ホイグリンカモメという名前ではカウントできません。ニシセグロカモメの可能性を検討して下さい。

ニシセグロカモメの可能性を検討する際には、どの図鑑であってもホイグリンカモメの項目と照合していただいてかまいません。なぜならホイグリンカモメ heugliniを独立種と扱おうがニシセグロカモメLarus fuscusの亜種と扱おうが、少なくともホイグリンカモメと識別される範疇に入っていれば、鳥類目録第7版でいうところのニシセグロカモメLarus fuscusの範疇に入っているからです。ですから、例えば氏原巨雄・氏原道昭氏の「カモメ識別ハンドブック」のホイグリンカモメを参考に識別してホイグリンカモメである、と判断できれば、ビッグイヤー愛知2018ではニシセグロカモメとしてカウント出来ることになります。

次に、識別に際しての注意点です。
セグロカモメとニシセグロカモメの違いは単に足の色だけではありません。どの図鑑を参照してもニシセグロカモメの背の色はウミネコに近い色をしています。これは氏原氏「カモメ識別ハンドブック」28ページ、70ページが大変参考になります。もしビッグイヤー愛知2018に参加している方でこの「カモメ識別ハンドブック」を未入手の方は入手することを強くお勧めします。

なお、鳥類目録第7版には、キアシセグロカモメ Larus cachinnans というのも載っています。これは前述「カモメ識別ハンドブック」のモンゴルセグロカモメに相当すると思われます。こちらはそれほど足の色は黄色くありません。「カモメ識別ハンドブック」では”足は黄色いものもいるが、淡いピンク色か肉色の個体が多い”と記載されています。GULLS OF EUROPE, ASIA AND NORTH AMERICA のイラストを見ても足の色は淡いピンク色です。こうなるとキアシセグロカモメという和名は大変ややこしいです。モンゴルセグロカモメかと思われる個体を撮影したら「カモメ識別ハンドブック」や「GULLS OF EUROPE, ASIA AND NORTH AMERICA」を参考にして慎重に検討し判断して下さい。そして確信が持てたら、キアシセグロカモメ、とカウントして下さい。(よほど識別に自信がないと難しいと思います。)

これらセグロカモメ群の分類について詳しく知りたい方は、文一総合出版の「日本の野鳥550水辺の鳥 増補改訂版」に4ページに渡って詳述されていますので参考にして下さい。愛知県支部の事務所に蔵書があります。

ではビッグイヤー愛知2018の参加者の皆様のご健闘を祈ります!









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2017年08月11日

メガソーラーの環境破壊

前回「ソーラーパネルとサギ」の記事を書きましたが、
今回もソーラーパネルからみの話です。

絶滅危惧種のチュウヒが生息している木曽岬干拓地で木曽岬メガソーラーが発電を始めたのは2014年12月でした。
日本野鳥の会三重が中心となって反対運動を展開しましたが奮闘及ばず、ソーラーパネルが設置されてしまったのです。
kisozaki.jpg

木曽岬メガソーラーのホームページによると、
 ・面積  78ha(ナゴヤドーム約20個分)
 ・出力  49155kW
 ・想定年間発電量  5200万kWh/年
  となっています。
http://www.kisozaki-megasolar.com/

  ナゴヤドーム約20個分とはかなりの面積です。

一方、名古屋市の港区潮見町に中部電力の「新名古屋火力発電所」があります。
中部電力のホームページによると総出力 3,058,000kWとなっています。
これは日本の火力発電所としては普通の規模です。
shinnagoya_N8.JPG

もしこの新名古屋火力発電所と同じ電力を木曽岬メガソーラーで発電すると仮定したとき、
木曽岬メガソーラーが何個いるのかを計算してみました。

すると、なんと木曽岬メガソーラーが359個必要という計算結果になりました。
(計算根拠は一番下にあります。)

359個分は面積にすると28000ヘクタールで、これは名古屋市の面積の約85%に相当します。

普通の規模の火力発電所1個分を発電するのに、名古屋市の面積の約85%が必要とは、
いかにソーラー発電とは場所をとる発電方法かが分かりますね。

今、日本の各地でソーラーパネルの設置による環境破壊が報告されています。
愛知県でも海上の森の隣接地に無許可でメガソーラーを設置したフジ建設の問題がありました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/feature/15/302961/122700037/?ST=msb


三重県四日市では2ヶ所でメガソーラーの設置が予定されています。
その場所はサシバの生息が確認されている貴重な里山環境であるため、
日本野鳥の会三重が反対運動をしています。しかしひとつは着工寸前という状態です。
https://miebird.org/index.php/ja/16-announce/417-shomei201703b


本来、固定価格買取制度というものは地球温暖化防止の観点から再生可能エネルギーによる発電を増やすために採用された制度だったはずです。
しかし誤解を恐れずに言えば、現実は売電によるお金儲けの手段として利用されているだけのように思えます。
里山環境を破壊したり、絶滅危惧種が生息する環境を破壊してまでソーラーパネルを設置するような事業者が地球温暖化防止のことを考えてやっているとは到底思えません。

メガソーラーによる環境破壊になんとか歯止めをかける必要があります。

自治体は大小全てのソーラーパネル設置に際して自然環境保護を第一とする厳しいガイドラインを設けて、環境破壊、景観悪化、希少種生息地破壊につながるような事案は全て排除するようにしていただきたいと思います。

前述の三重県四日市市議会ではそのような動きがあるようです。非常に好ましいことだと思います。
https://mainichi.jp/articles/20170630/ddl/k24/010/183000c

ぜひ全国の自治体に広がればいいですね。




<参考>
計算根拠は以下の通りです。
 新名古屋火力発電所の推定年間発電量 305万kwx365日x24時間x稼働率0.7=1870260万kwh/年
 1870260万÷5200万=359個
 78ha x 359個=28002ha
 名古屋市の面積は、32640ha
 28002ha÷32640ha=約85%

ちなみに、浜岡原子力発電所3号4号5号(合計出力362万kw 稼働率0.7)で同じ計算をすると、
33228haとなり、これは名古屋市の面積を上回ります。



日本野鳥の会愛知県支部 http://www.wbsj-aichi.org/
サギコロニー調査 http://herons-egrets.sakura.ne.jp/
ポートアイランドを野鳥の保護区にする活動 http://www.wbsj-aichi.org/port_island/page.html





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2017年08月07日

ソーラーパネルとサギ

愛知県支部の役員のMさんから興味深い情報を提供していただきました。

愛知県内のとある池に浮かべたソーラーパネルをサギが巧みに利用していると思われる写真です。
このソーラーパネルが浮かべてある池は以前はカモ類がたくさん越冬していました。
ところがあるときソーラーパネルが池に設置され、カモ類がほとんど越冬しなくなりました。
野鳥保護の立場からみると非常に残念なことになったのです。
しかし野鳥のたくましさ、とでもいいましょうか、このソーラーパネルを巧みに利用していると
思われる現象が見られるようになったのです。
写真のソーラーパネルの上にいるのは大部分がダイサギと思われます。
(クリックで拡大)
20170730ソーラー池のサギ.JPG

そして注意深くこの写真を見ると、ダイサギがソーラーパネルの隙間から水面のエサを狙っている様子がうかがわれます。
通常であればサギ類はこの池のこの場所は深すぎてアクセスすることができません。せいぜい水辺の浅瀬でエサをとるくらいです。しかしこのソーラーパネルが出来たおかげでサギたちは池の中央にまでアクセスすることが可能になりました。そしてソーラーパネルの隙間から水面を泳ぐ魚を取るようになったと思われます。
人間の作った人工物を巧みに利用するサギたちの順応力には驚くばかりです。

しかし野鳥の中にはこれほどの順応力を持たないものもいます。そういった順応性に乏しい野鳥にはこれからの日本はますます住みにくい場所になっていく可能性が高いです。そうならないようにするためには人間本位の考えから自然環境本位の考えにシフトしていく必要があると思います。

日本野鳥の会愛知県支部 http://www.wbsj-aichi.org/
サギコロニー調査 http://herons-egrets.sakura.ne.jp/
ポートアイランドを野鳥の保護区にする活動 http://www.wbsj-aichi.org/port_island/page.html
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