2021年05月24日

メガソーラーの環境破壊 その5

2021年5月23日(日)、愛知県瀬戸市で建設中のメガソーラーの合同視察会に参加しました。


 視察メンバーは、現地で自然保護活動をしているUさん、「郷土の歴史と文化を広める会」の4名、瀬戸市文化課のSさん、瀬戸市文化振興財団のKさん、それに日本野鳥の会愛知県支部のN支部長、普及企画部部長のHさん、副支部長のN。

 さらに今回は、メガソーラー建設の事業者である「株式会社 鈴鹿」のY様、「大成建設株式会社 名古屋支店」のT様、O様、「JFEプラントエンジ株式会社」のK様らに同行して頂き、工事の進捗情報を説明していただきました。
株式会社 鈴鹿のY様、大成建設株式会社 名古屋支店のT様、O様、「JFEプラントエンジ株式会社」のK様には、改めまして感謝申し上げます。

さて、今回の視察は我々日本野鳥の会愛知県支部としては前回2020年10月4日以来です。

前回の視察報告ブログはこちら 「メガソーラーの環境破壊 その4

メガソーラー設置場所の地図。赤丸がUさんからの自然保護申し入れエリア。
(クリックで拡大)
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Google Mapはこちらをクリック
(Google Map作成は日本野鳥の会愛知県支部のN支部長)

工事は着々と進んでいます。
下の写真は南エリアのソーラーパネル設置予定地。伐採は完了していました。
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皆で、北エリアに移動。
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このエリアの中には、文化庁選定「歴史の道百選」のひとつ 中馬街道(ちゅうまかいどう)が走っています。  
 
信州飯田街道(中馬街道)
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この中馬街道はかなりの部分がメガソーラー設置場所の中に含まれることになります。

中馬街道の入り口。ここから森の中に入っていきます。最初は自然保護申し入れエリア。
このエリアはソーラーパネル設置計画地のなかでも最も生態系が豊かなところです。
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本当に美しい森です。キビタキ、ヤマガラ、メジロなどがきれいな声で鳴きかわしていました。
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自然保護申し入れエリアで設置業者様から状況説明。
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株式会社 鈴鹿様ほか業者の方々の自然保護への企業努力によって自然保護申し入れエリアへのソーラーパネル設置、トラック進入路の工事は回避される予定です。ただパネル面積が減ってしまうので、西側の緑地の一部にパネルを設置することも検討されているそうです。

さらに森の中を歩いていきます。キビタキ、オオルリ、センダイムシクイ、メボソムシクイらの夏鳥がまるで声の美しさを競うかのごとく鳴きかわしていました。
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自然保護申し入れ区域を出て、伐採区域に出ました。
その光景に思わず声を失う。
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伐採された自然林。
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ロープの張られた道は、日本の街道100選の「中馬街道」。この道の両側5メートルずつは伐採されずに残りますがその外側の森は伐採されます。
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伐採されたところはやがてソーラーパネルで埋め尽くされます。
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ある程度、想像はしていましたが目の当たりにすると言葉を失います。
メガソーラーの建設とは、こういうことなのかと。。。
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背後の自然林から聞こえてくるのは、キビタキ、オオルリの美しい歌声。
ごめんね、来年、もうこの森は無いんだよ。
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今回、案内していただきました「株式会社 鈴鹿」のY様、「大成建設株式会社 名古屋支店」のT様、O様、「JFEプラントエンジ株式会社」のK様らの最大限の自然保護、景観保護努力には感嘆いたしました。
案内していただけましたことを改めて感謝申し上げます。


2012年、旧民主党政権時代に始まった「固定価格買取制度(FIT制度)」。
再生可能エネルギーで発電した電力を固定価格で買い取り、その分を国民が負担する制度です。

この制度に乗っかる形でメガソーラーがいっきに全国に広がった。

再エネ礼賛メディアはほとんど報道しない毎年値上がりする再エネ賦課金
昨年度の2.98円/kwh から約13%値上がりして、今年5月から3.36円/kwh に。
(クリックで拡大)
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この再エネ賦課金はあなたも毎月支払っています。
(電力会社の料金明細書を見ると小さな字で書いてあります。)

再生可能エネルギー(いわゆる自然エネルギー)は環境にやさしい、そんな考えが流布しています。
ソーラー発電、風力発電の一体どこが環境にやさしいのか。

ある意味、自然エネルギー ≒ 自然破壊エネルギー とも言えないこともない。

水力発電のダムしかり、風力発電の風車しかり、そしてメガソーラーしかり。

また、再生可能エネルギーはコストが高く、普及すればするほど電気代は確実に上がります。


しかし、再エネの普及(≒自然破壊)はさらに加速する可能性がある。
なぜなら、政府は2030年度の温室効果ガスの削減目標を2013年度比26%減から46%減に引き上げたからです。

令和3年4月22日首相会見

この会見のなかで首相は「再エネを更に進める」と言っています。

再エネ普及により電気代が上がって一番深刻な打撃を受けるのは、鉄鋼業界です。
鉄鋼業は産業の基盤となる最重要の産業で、鉄鋼業がつぶれるとほとんどの産業がダメージを受けます。


鉄鋼業界団体がこれ以上の再エネ普及に強い憂慮を示す、ほとんど悲鳴のような声明を発表しました。

「我が国のエネルギー政策に関する緊急共同要望」
kinkyuukyoudouyoubousyo2.pdf


自然保護はもとより、日本経済のためにも、もうこれ以上の再エネ普及はやめるべきです。

では、CO2の削減をいったいどうするのかという議論になりますが、CO2の排出量削減は再エネ普及に頼らずともできる方法があります。

それは、産業界の「老朽化設備の更新促進」です。

日本の産業界には、かなり老朽化した設備を使ってモノづくりしている工場がたくさんあります。

老朽化設備は電気を多く食う、すなわちCO2をたくさん排出します。
でも多くの中小企業は、老朽化設備を更新するお金の余裕がないのです。

国がもっとお金を投入して、中小企業の老朽化設備の更新を促進すれば、相当量のCO2排出量を削減することが可能となります。※1

そうすれば、投入したお金は国内で回る。国内の仕事が増え、景気が良くなり、国民の皆が幸せになる。
自然も破壊されずにCO2削減が可能です。

再エネ普及にお金を投入したところで、中国のソーラーパネルメーカーをはじめとする海外の再エネ業者と、ごく一部の国内業者が潤うだけです。そして自然は大きく破壊される。

日本は「老朽化設備の更新促進」でやれる範囲のCO2削減をすればよいのです。
日本はもう十分にCO2排出量削減の責任を果たしていることはデータが示しています。
地球規模でみた場合、最も排出量削減の努力をすべきは中国です。

下のグラフはいかに中国のCO2排出量がダントツかを示しています。
ぜひクリックして拡大してみて下さい。
(IEA 国際エネルギー機関のデータより、ブログ筆者作成)

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日本のCO2削減努力が足りない、という声を国外のみならず、日本の野党やメディアから聞きます。

しかし、上のグラフが示す通り、日本はEUを上回る量のCO2削減率を達成しています。※2

エネルギー資源がほとんどない日本という国にあってはこれは脅威的なことです。※3
これは日本企業の省エネ努力の賜物なのです。

最後にもう一度、言います。

再エネのこれ以上の普及は自然保護、経済の両方にとって何の利益もありません。
再エネの普及に費やすお金を中小企業の「老朽化設備の更新促進」に回すべきです。

(文責 筆者)

※併せてお読み下さい。「メガソーラーの環境破壊」

メガソーラーの環境破壊 その1
メガソーラーの環境破壊 その2
メガソーラーの環境破壊 その3
メガソーラーの環境破壊 その4



※1 企業の省エネルギー活動の中で最もCO2排出量削減効果があるのは老朽化設備の更新です。経産省や環境省の様々な補助金制度はありますが、条件が厳しくハードルは高いです。もっと予算をつけてハードルを下げるべきです。ちなみに令和3年度と令和2年度補正予算分を合わせて洋上風力発電の開発には予算が110.3億円もついています。(経済産業省 令和3年度資源・エネルギー関係予算の概要)


※2 上のグラフが示すとおり、日本の2013年比のCO2削減率は、12.4% 、一方で、EUの2013年比のCO2削減率は、1.01%増加となっており、日本のCO2削減率はEUを上回ります。

※3 日本の2013年比で2018年12.4%のCO2削減率は、再エネ導入による効果だという主張する方がおられるかもしれません。残念ながら違います。むしろ原発の再稼働によるところが大きいです。原発も再エネ同様にCO2を排出しません。2018年の全発電量に占める風力発電+太陽光発電の割合は、わずか1.8%(!)。それに対して原発は7%です。(資源エネルギー庁の統計データより。)


日本野鳥の会愛知県支部 

入会はこちら(ぜひ支部型会員か総合会員でお願いします。楽しいですよ!)


posted by Ted at 08:52| Comment(0) | メガソーラー

2020年10月05日

メガソーラーの環境破壊 その4

2020年10月4日(日)、愛知県瀬戸市のメガソーラー建設予定地を視察しました。

案内していただいたのは、計画当初から地元で反対運動をされているUさんです。視察メンバーは日本野鳥の会愛知県支部の支部長、保護部の1名、普及企画部の1名、それに私の4名です。

メガソーラー設置計画場所は愛知県の北東、岐阜県土岐市との県境にあります。
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薄い緑で囲ってある区域がすべてメガソーラー設置予定地。総面積60ヘクタールでナゴヤドーム約13個分。森林伐採面積は30ヘクタールです。赤丸で囲った区域がUさんによる自然保護申し入れ区域です。
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上の地図の赤丸部分拡大図。この赤斜線エリアが自然保護申し入れ区域。落葉広葉樹の自然林としては瀬戸市内で最大級です。
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Google Mapはこちらをクリック


この区域は、春になるとオオルリやキビタキがたくさんやってきて繁殖をします。ムササビ、ニホンカモシカなどの哺乳類も生息しています。このエリア内を流れる蛇ケ洞川(じゃがほらがわ)の下流にはオオサンショウウオが生息しています。

自然保護申し入れ区域をUさんに案内してもらいました。
自然がいっぱいで美しいところです。
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蛇ケ洞川(じゃがほらがわ)。この川の下流にオオサンショウウオ生息地があります。
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この地方に生息する「トウノウネコノメ」。ネコノメソウの一種。3月になると黄色い花が咲きます。これ以外にもホンゴウソウ、シロバナナガバノスミレサイシン、アキノギンリョウソウなど希少な植物が自生しています。
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こんな素晴らしいところがメガソーラー設置で損なわれるなんて信じられない気持ちでした。

メガソーラー設置業者は、三重県鈴鹿市に本社のある「株式会社 鈴鹿」。
同社ホームページによると、電気設備事業や機械設備事業、土木・建設事業などを手掛ける会社です。メガソーラー事業としては三重県を中心に多数の施工を手掛けているようです。

株式会社鈴鹿としては、法律的には何も問題なくメガソーラー設置を進めています。すでにこの土地の買収は合法的に終わっていて、法的にこのメガソーラー設置を止める手立てはありません。

しかしながら、法的に問題なければお金もうけのために美しい自然を壊してしまっていいのだろうか、という素朴な疑問は残ります。

何より大きな犠牲を負わされるのはこの地域に生息する希少な植物、野鳥、その他たくさんの生き物たちです。

とはいえこのメガソーラー設置業者を責める気持ちは全くありません。悪いのは設置業者ではないのです。この状況を招いた根本原因の「固定価格買取制度」を作った2012年当時の政策が悪いのです。いまその代償を自然が負わされています。

ソーラー発電はたしかに燃料代がかからずCO2を排出しないクリーンな発電方法です。しかし貴重な自然を破壊してまで設置するのは本末転倒です。

さらにメガソーラーによる環境破壊に拍車をかけんばかりに再生可能エネルギーを礼賛するメディアがいます。そうしたメディアは再エネを礼賛する一方で国民が一律に負担を負わされている再エネ賦課金について言及することはありません。またメガソーラーによってどれだけ自然が破壊されているか言及することもありません。

ちなみに再エネ礼賛メディアは全く報道しないのですが、2018年度の固定価格買取制度による国民負担の再エネ賦課金総額は2.4兆円で、これは消費税1.1%に相当します。消費税1%あげるとなると国中が大騒ぎになりますが、実は国民が知らないうちにこんなにも徴収されているのです。経済産業省によると2020年度は標準家庭の年間負担額 9,288円/年と予想されています。たぶんほとんどの人は知らないでしょう。再エネ礼賛メディアが決して報道しない、「不都合な真実」です。

さて、瀬戸市メガソーラー問題に話を戻します。

株式会社 鈴鹿がどの程度、この申し入れ区域の保全に配慮して工事を進めるのか現段階では不明です。

同社ホームページの行動方針に、
「事業活動によって生じる環境に与える影響を認識し、環境汚染の予防に努めるとともに、環境保全活動を推進します。」との記載があります。

この言葉通りに同社が実践していただければ、きっとUさんの申し入れ区域は手つかずのまま保全され、蛇ケ洞川にはいっさい土砂が流入しないよう配慮された工事となるでしょう。
株式会社鈴鹿には、企業による利益追求と自然環境保全が両立可能であるということをぜひとも言葉通りにお示しいただきたいです。

この区域の生物たちを代表して、切に要望いたします。

日本野鳥の会愛知県支部


※併せてお読み下さい。「メガソーラーの環境破壊」

メガソーラーの環境破壊 その1
メガソーラーの環境破壊 その2
メガソーラーの環境破壊 その3

メガソーラーの環境破壊 その5







posted by Ted at 10:16| Comment(0) | メガソーラー

2019年06月26日

メガソーラーの環境破壊 その3

最近、ある政党のマニフェストを眺めていたら「2030年までに石炭火力発電所の全廃を目指します。」と書いてあってちょっとびっくりしました。
2030年といえばあと11年後です。そんなにすぐに石炭火力発電所を全廃できる可能性があるのでしょうか。

で、ちょっと実現性を検証してみました。

日本の主な発電方法には、石炭火力発電、天然ガス(LNG)火力発電、石油火力発電、水力発電、原子力発電、自然エネルギー発電などがあります。

平成29年度の発電方法ごとの発電比率は下記グラフの通りです。

(資源エネルギー庁の統計データから作成)
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この中でもっとも温暖化ガスを排出するのが石炭火力発電です。
なので、もしマニフェストにある通り2030年までに 石炭火力発電を全廃できるならそれに越したことはありません。
でも代替え方法で発電量を補わないと発電量が不足してブラックアウトしてしまいます。


このマニフェストには 代替え発電方法が書いてないのですが、
「・・・自然電力100%を目指します。」と書いてあるので自然エネルギー発電を石炭火力発電に置き換えることを想定しているかもしれません。

ではどんな自然エネルギーがあるかというと、実用化されているのは太陽光発電、風力発電、洋上風力発電、地熱発電、バイオマス発電などです。

この中でもっとも低コストで一番実用化が進んでいるのは太陽光発電です。

そこで石炭火力発電を全廃してその発電量を太陽光発電で置き換えるというシナリオが実現するのか計算してみました。ちなみにこの政党は原子力発電全廃も公約に挙げているので、合わせて原子力発電も全廃する想定で計算しました。ベース電源はLNG発電で全てまかなうことができるという前提です。

資源エネルギー庁の統計資料によると、平成29年度では、
日本の全発電量 9133億kwh です。
このうち、
 石炭火力の発電量は、約33%で 2981億kwh です。
 原子力の発電量は、約3%で、313億kwhです。
 合わせて、約36%で、3294億kwh です。
(表参照。クリックで拡大)
発電量グラフ.png

3294億kwhを太陽光発電で発電するには、
どれだけの出力と設置面積とコストが必要でしょうか。

結論から言うと、発電出力31,335万kw設置面積 614,166ha です。
ちなみに東京都と埼玉県を合わせた面積が、598,647haなので、
東京都と埼玉県を合わせた以上の面積が必要ということになります。

設置コストも計算すると、資源エネルギー庁の資料より、
メガソーラーの設置コストは29.4万円/kwなので、

31335万kw x 29.4万円=約92兆円!!!

しかもメガソーラーを設置するための土地代を含んでいないので、
土地代まで含めると天文学的な数字になります。

これはとても実現性があるとは言い難く、石炭火力発電(33%)と原発(3%)の全廃分を全てメガソーラーで置き換えるというシナリオは不成立です。この政党は石炭火力を全廃する代わりにLNG火力に置き換えることを前提にしているのかもしれません。

ですからこのマニフェストをご覧になった方はくれぐれも石炭火力発電の代替えでメガソーラーを設置すればいいなどと勘違いなさらないでいただきたいです。

とにかくメガソーラーというのは場所をとり、野鳥たちから生息場所を奪ってしまうことが多いです。

どの政党が政権を担おうとも自然環境には最大限配慮しつつ実現性のある方法をとって欲しいと心から願います。

併せてお読みください。
メガソーラーの環境破壊 その1
メガソーラーの環境破壊 その2
メガソーラーの環境破壊 その4
メガソーラーの環境破壊 その5

posted by Ted at 13:13| メガソーラー