2019年06月26日

メガソーラーの環境破壊 その3

最近、ある政党のマニフェストを眺めていたら「2030年までに石炭火力発電所の全廃を目指します。」と書いてあってちょっとびっくりしました。
2030年といえばあと11年後です。そんなにすぐに石炭火力発電所を全廃できる可能性があるのでしょうか。

で、ちょっと実現性を検証してみました。

日本の主な発電方法には、石炭火力発電、天然ガス(LNG)火力発電、石油火力発電、水力発電、原子力発電、自然エネルギー発電などがあります。

平成29年度の発電方法ごとの発電比率は下記グラフの通りです。

(資源エネルギー庁の統計データから作成)
無題.png


この中でもっとも温暖化ガスを排出するのが石炭火力発電です。
なので、もしマニフェストにある通り2030年までに 石炭火力発電を全廃できるならそれに越したことはありません。
でも代替え方法で発電量を補わないと発電量が不足してブラックアウトしてしまいます。


このマニフェストには 代替え発電方法が書いてないのですが、
「・・・自然電力100%を目指します。」と書いてあるので自然エネルギー発電を石炭火力発電に置き換えることを想定しているかもしれません。

ではどんな自然エネルギーがあるかというと、実用化されているのは太陽光発電、風力発電、洋上風力発電、地熱発電、バイオマス発電などです。

この中でもっとも低コストで一番実用化が進んでいるのは太陽光発電です。

そこで石炭火力発電を全廃してその発電量を太陽光発電で置き換えるというシナリオが実現するのか計算してみました。ちなみにこの政党は原子力発電全廃も公約に挙げているので、合わせて原子力発電も全廃する想定で計算しました。ベース電源はLNG発電で全てまかなうことができるという前提です。

資源エネルギー庁の統計資料によると、平成29年度では、
日本の全発電量 9133億kwh です。
このうち、
 石炭火力の発電量は、約33%で 2981億kwh です。
 原子力の発電量は、約3%で、313億kwhです。
 合わせて、約36%で、3294億kwh です。
(表参照。クリックで拡大)
発電量グラフ.png

3294億kwhを太陽光発電で発電するには、
どれだけの出力と設置面積とコストが必要でしょうか。

結論から言うと、発電出力31,335万kw設置面積 614,166ha です。
ちなみに東京都と埼玉県を合わせた面積が、598,647haなので、
東京都と埼玉県を合わせた以上の面積が必要ということになります。

設置コストも計算すると、資源エネルギー庁の資料より、
メガソーラーの設置コストは29.4万円/kwなので、

31335万kw x 29.4万円=約92兆円!!!

しかもメガソーラーを設置するための土地代を含んでいないので、
土地代まで含めると天文学的な数字になります。

これはとても実現性があるとは言い難く、石炭火力発電(33%)と原発(3%)の全廃分を全てメガソーラーで置き換えるというシナリオは不成立です。この政党は石炭火力を全廃する代わりにLNG火力に置き換えることを前提にしているのかもしれません。

ですからこのマニフェストをご覧になった方はくれぐれも石炭火力発電の代替えでメガソーラーを設置すればいいなどと勘違いなさらないでいただきたいです。

とにかくメガソーラーというのは場所をとり、野鳥たちから生息場所を奪ってしまうことが多いです。

どの政党が政権を担おうとも自然環境には最大限配慮しつつ実現性のある方法をとって欲しいと心から願います。


(文責 ブログ管理人)
posted by Ted at 13:13| メガソーラー

2019年02月08日

メガソーラーの環境破壊 その2 

2017年8月11日にブログ記事「メガソーラーの環境破壊」を投稿したところ、いまだに毎日10件を超えるアクセスがあります。この問題についていかに皆様の関心が高いかを示していますね。

http://herons-egrets.sblo.jp/article/180626026.html

愛知県東浦町では地域住民の方々が、愛知県に対してメガソーラー業者への開発許可を取り消すよう求めていましたが、昨年11月、名古屋地裁は訴えを却下しました。業者は2万平方メートルの森林を伐採することになっています。

建設予定地(「東ヶ丘の環境を守る会 卯ノ里の里山を守る会」さんのホームページへのリンク)
https://unosato.wixsite.com/higashigaoka/place

愛知県ではいまだメガソーラーは環境アセスメントの対象外のため、野鳥を頂点とする生態系のことは全く議論の対象になっていません。残念なことです。

しかし大手メディアの中には環境破壊問題をほとんど考慮に入れず、再生可能エネルギーを礼賛するような記事を書くことがあります。
(例)
中日新聞社説 2017年8月19日「乗り遅れてしまうのか 温暖化とエネルギー」
中日新聞社説2017.8.19.jpg

中日新聞社説 2018年1月9日「もはや環境途上国 ニッポンの大問題」
参考ウェブサイト http://editorial.x-winz.net/ed-83968

この社説の書き手は再生可能エネルギーを設置する際の環境へのダメージをほとんど考えていないようです。(※注1)

環境へのダメージが無いならば再生可能エネルギーは理想的な発電方法でしょう。しかし現実は真逆です。メガソーラーによってチュウヒをはじめとする希少鳥類の生息地は破壊され、地元の人々が愛する里山環境がどんどん破壊されています。環境保護を考慮しない再生可能エネルギー礼賛は、人間本位の勝手な考えと言わざるを得ません。

この再生可能エネルギー礼賛は大手メディアだけでなく、世論に大きな影響を与える有名人の発言にも見られます。これらの人々に共通して言えることは、
 @再生可能エネルギーが自然環境に与えるダメージをほとんど考慮していない
 A再生可能エネルギーの高コストをほとんど言及しない
 B夢のようなことを語って現実問題から乖離している
ということです。

なぜこのようなことを言うのか、推定される理由として、
 @自然保護にあまり関心がない?
 A再生可能エネルギーが高コストなことにあまり関心がない? (有名人はおおむね裕福なので電気料金を気にする必要がない? 簡単にコストを下げられると思っている?)
 Bエネルギー問題に関して理想を語ることがメシのタネになる?

言うまでもなく自然保護は経済活動と同程度に重要です。人の生活は自然環境の上に立脚して成り立っているからです。
また再生可能エネルギーは火力発電等の通常の発電方法に比べて非常に高コストです。 (※注2 )
世の中の多くの人は電気料金を気にしないで済むような裕福な人ではありません。製造業は電気料金が1%上がっただけで大きな打撃を受けます。
また高コスト問題は、現状では技術的にすぐ解決できる問題ではありません。
理想を語ることは悪いことでないですが、それがエネルギー問題となると話は別です。エネルギー問題は国家安全保障や国民経済の観点から論じられるべきであって、形而上学のような話ではないからです。

大手メディアや有名人による数字の裏付けによる論証がほとんど無い再生可能エネルギー礼賛の主張に惑わされることなく、環境保護の視点とコストの視点から、数字に基づいて良し悪しを判断する必要があります。

最後にメガソーラーがいかに広大な面積の自然環境を破壊するのか再び数字で示したいと思います。

2019年2月8日現在、日本で稼働中の原発は合わせて9基です。
(原発をメガソーラーとの比較対照にしますが、ここで原発の是非を語る意図は全くありません。いかにメガソーラーが広大な設置面積を必要とするのかを比較するためです。)

これら9基の原発の出力は合わせて、930万kw です。
ではこの9基の原発が1年間に発電する電力量と同じだけの電力量をメガソーラーで発電すると仮定した場合、どれだけのソーラーパネル設置面積が必要だと思いますか?

答えは、1519km2    東京都の面積の約70% です。(計算根拠は一番下にあります。)

メガソーラーというのはこれほどまでに場所を必要とするのです。
日本全国で環境問題が引き起こされるのも無理はありません。

メガソーラーによる環境破壊をこれ以上招かないようにするためにも、再生可能エネルギーを礼賛する方々の根拠があいまいな主張を鵜のみにせず、根拠の確かな数字で再生可能エネルギーの是非を判断することが大切です。

そしてメガソーラー設置の際には、環境アセスメントを厳密に適用することを条例で制定することが何よりも望まれます。”環境に最大限配慮し、地元住民の同意を得ること”を条例の文面に入れることが望ましいと思います。



※注1
中日新聞社説 2017年8月19日「乗り遅れてしまうのか 温暖化とエネルギー」に関するツッコミです。
(数字は全て2017年8月当時のもの。太字が社説からの引用部分)
社説に「一昨年世界では再生可能エネルギーの新規発電設備容量が、化石燃料プラス原子力を越え、投資額も史上最高を記録」とあるが、世界全体の投資額の6割強を占める中国、アメリカ、日本の投資はいずれも補助金に頼った上での投資であり、補助金制度が打ち切られたとき、投資は続かない。なぜなら再生可能エネルギーは、現状では補助金に頼らないと成り立たない高コストの発電方法のためである。

社説に「(再生可能エネルギーの)発電量に占める割合も23.7%と、四割に及ぶ石炭に続く第二の電源に浮上」とあるが、太陽光、風力、バイオマス等の発電と、通常のダムによる水力発電とは分けて考えるべきである。さもないと23.7%という数字はあたかも太陽光や風力発電が四割に及んだかのように誤解を与えかねない。この23.7%のうち、16.6%は従来からある水力発電等による発電である。23.7%から水力発電の16.6%を除いた太陽光、風力等による再生可能エネルギーによる発電量は7.1%となり一割にも及ばない。

社説に「ドバイやチリでは太陽光が1キロワットあたり三円台前半、欧州の洋上風力が六円前後で取引されている」とあるが、ドバイやチリの太陽光発電は日本とは比較にならないほど良い日照条件であるため、このコストが可能である。しかしこの日照条件は日本では全く当てはまらない。洋上風力についても、欧州の北西地域は風況が優れており、日本とは比較にならない。この社説の表現では日本でも六円前後で実現できるのでは、と誤解を与えかねない。

社説に「温暖化への危機感をてこに、再エネ電力市場への投資はさらに加速する見通しだ」とあるが、上記のドバイ、チリ、欧州の北西地域のように再生可能エネルギー発電に向く地域の場合は、その投資に見合ったコストを回収できるため投資は進むだろう。しかし日本はそうではない。補助金による助成が打ち切られたとき、市場原理によって再エネ電力市場は縮小するだろう。



※注2
ソーラー発電、風力発電などの再生可能エネルギーは、あまりにも高コストなので国からの補助金無しでは成り立ちません。国は再生可能エネルギー発電業者に補助金を出し(固定価格買い取り制度 FIT等)、再生可能エネルギー発電業者は発電した電気を大手電力会社に売電し、大手電力会社は「再エネ発電促進賦課金」の名目で全ての電気利用者から売電と買電の差額を徴収しています。つまりメガソーラー業者の利益は我々一般の国民から広く徴収されているのです。再エネ発電促進賦課金は毎年値上がりします。なぜならメガソーラー発電や風力発電がどんどん設置されているからです。2019年は、1kwh当たり、2.9円です。ちなみにひと月の電気使用量384kwhとして、支払い料金が11,105円とすると、そのうちの1,113円が再エネ発電促進賦課金です。電気料金の約一割はメガソーラー業者等の利益に使われています。一度、ご家庭の電気料金支払い明細書で確認してみて下さい。繰り返しますが、メガソーラーが増えれば増えるほど電気料金は確実に値上がりします。
IMG_3898.jpg




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計算根拠:
2019年2月8日時点で稼働中の原発9基のトータル出力
 930万kw

これら9基の年間発電量:

  930万kw x 24h x 365日 =8,146,800万kwh

ソーラーパネルの設備効率を12%とする。(木曽崎メガソーラーと同レベル)

ソーラーパネルで年間8,146,800万kwhを発電するために必要な出力:
  8,146,800万kwh÷(設備効率0.12 x 24h x 365日)= 7750万kw

環境省の資料「太陽光発電事業の環境保全対策に関する自治体の取組事例集 平成30年6月」によると、
ソーラー発電規模10MW(1万kw)当たりの敷地面積は平均約19.6ha。

7750万kwを発電するために必要なソーラーパネル面積:
  7750 x 19.6ha =151900ha (1519km2)

東京都の面積
  2188km2

7750万kwを発電するために必要なソーラーパネル面積が東京都の面積に占める割合:
  1519km2 ÷ 2188km2 x 100 = 約 70%



























posted by Ted at 15:49| メガソーラー